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倒産直前の取引代金が支払い不能になった場合取締役の個人責任を問えるか(企業法務)

2024-01-22

1.問題のケース

「取引先に建築資材を納入したのですが、完成直後に取引先の代理人弁護士から、破産するので代金は支払えない旨の通知が来ました。会社は破産するということなので財産はないと思うのですが、取引先の取締役はもうすぐ破産するので売買代金を支払えないことを知っていながら商品を注文したのだと思います。このような取締役は許せないので、取締役の個人責任を追及したいのですができるでしょうか。」

このような相談がありました。

取引先は他にも同じような未払いが沢山あるようで、代金を支払わないまま商品だけは取り込んだ上で会社を破産させるという選択をしたようです。

もちろん取締役が会社の債務に連帯保証している場合は連帯保証人としての責任を追及できますが、連帯保証人になっていない場合はどうでしょうか。

倒産のイラスト(女性会社員)

2.役員の第三者責任

役員は、その任務を怠ったとき(任務懈怠行為)には会社に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負っていますが(会社法423条)、この他に、一定の要件を満たす場合、取締役が第三者(取締役が所属する会社以外の者)に対して責任を負うとされています。(会社法429条1項「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」)

これは、株式会社の経済社会における重要な地位、その株式会社の活動は取締役等役員の職務執行に依存していることを考慮し、第三者保護のため、特別に認められた特別法定責任と理解するのが通説的見解です。

賠償責任が認められる要件は①職務行為であること②任務懈怠についての悪意又は重大な過失③第三者の損害の発生④損害と①②との因果関係が認められること、となります。

第三者は、自己に対する加害についての悪意・重過失ではなく、任務懈怠についての悪意・重過失を立証すればよいとされています(最高裁大法廷昭和44年11月26日判決 民集23巻11号2150頁)。

また、損害の範囲については、債権者保護の観点から、役員の行為によって第三者が直接被った損害(直接損害)のみならず、会社に損害が生じ、その結果第二次的に第三者が損害を受けた場合(間接損害)も含むと考えられています。

3.本件について

本件の取引先A社の資産状態が相当悪化しており、商品代金を期日に支払うことができないことを容易に予見することができたにもかかわらず、商品の発注をしたような場合には、商品の発注をした取締役に会社法429条1項の損害賠償責任が認められる場合があると考えられます。

経営状態が悪化した会社が、商品を購入してその代金が支払い不能となった場合に、会社の代表取締役に会社法429条1項に基づく責任を認めた事例として大阪高裁平成26年12月19日(判例時報2250号80頁、金融・商事判例1484号2頁)があります。

この件では支払のために手形を振出したが振出の時点で決済は不可能で、会社債権者に損害を与えることを容易に認識し得たと認定しています。