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公益通報者保護法の改正 役員も保護の対象に(コンプライアンス)

2024-01-22

1.公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は、リコール隠しや産地偽装など企業の不正・不祥事が多くが発生し、またその多くが内部告発により発覚したこと等から、国民生活の安定、社会経済の健全な発展のため、公益通報した通報者を保護すべきとの要請に基づき策定されたものです。

労働者が、役務提供先の事業者において法令違反を認識し、事業者の内部や外部(行政機関や報道機関等)へ通報をした場合に、通報をしたことを理由として解雇その他不利益な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば公益通報として法的に保護されるのかという制度的なルールを明確にしています。

公益通報者保護法は平成18年4月1日に施行されましたが、施行当初は公益通報者として保護されるのは労働者(派遣労働者を含む)のみで、対象となる法律は犯罪行為が規定されている法律に限定されていました。

2.令和4年6月施行の改正

その後、より公益通報制度を利用しやすくする等の目的で、令和4年6月1日に改正法が施行されました。

①事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすく、②行政機関等への通報を行いやすく、③通報者がより保護されやすく、という3つのコンセプトにもとづいた改正がなされています。

①事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくするための改正

常時使用する労働者の数が300人を超える全ての事業者に対し、内部公益通報対応体制の整備義務を課しました(300人以下の事業者は努力義務)。

内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置の具体的な内容は、

「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(指針)

において規定されています。この指針は法定指針と言われ、公益通報者保護法の一部を構成することになりますので、指針に違反した場合、公益通報者保護法に違反したことになります。

また、事業者に対し、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を公益通報対応業務従事者(従事者)に指定する義務を課し、従事者に指定された者には刑事罰付きの守秘義務を課すこととしました。

②行政機関等への通報を行いやすくするための改正

行政機関への通報が公益通報として保護される場合として、従前の信ずるに足りる相当の理由がある場合に加えて、新たに氏名等を記載した書面を提出する場合を規定しました。

③通報者がより保護されやすくするための改正

保護される公益通報者の範囲について、従前の労働者に加え、新たに役員と退職後1年以内の退職者も含めることとしました。

役員については、取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、法令に基づき法人の経営に従事している者を含み、会計監査人、退職した役員は含まれません。

また、役員が内部告発をするにあたっては、自ら調査是正義務を果たしていることが要件となる場合があるほか、公益通報を理由とする役員の解任は違法・無効にはならないこと(ただし損害賠償義務は負わないほか、解任による損害賠償請求は可能です。)に注意する必要があります。

また、保護される公益通報の対象となる法令違反行為について、従前の犯罪行為に加え、新たに過料対象行為を含めました。

今回の改正により、事業者は内部公益通報対応体制の整備義務を負うことになりましたので、これに対応できないと法違反の責任を問われることになりますので注意が必要です。

また、役員も通報者として保護の対象となりましたが、保護される要件として調査是正義務を果たしていることが求められますので労働者よりも厳しいものになります。

さらに、対象として刑事罰のみならず過料対象行為という行政罰に当たる行為が加わり、対象は大幅に増えました。対象となる法律については消費者庁のHP等で確認していただきたいと思います。