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怪我による(人身)損害賠償請求権の時効と物損による損害賠償請求権の時効の違い(交通事故)

2024-01-22

1.人身損害(人損)と物的損害(物損)の違い

人損とは、交通事故に遭い、死傷したことにより生じる損害をいいます。

怪我の治療に必要な治療費、入院費、通院交通費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害が生じた場合の後遺障害慰謝料、逸失利益、死亡した場合の死亡慰謝料などが含まれます。

物損とは、自動車などが破損した場合の修理費(修理が不可能なほど破損した場合は自動車の時価)、レッカー代、代車料などが含まれます。

2.それぞれの消滅時効について

これらの損害を請求するにあたっては、請求できる期間が法律で定められています。

その期間を徒過すると、加害者から消滅時効の主張(援用といいます)をされ、損害を請求できなくなるおそれがあります。

それではいつまでであれば請求できるでしょうか。

実は、人損と物損でその期間は異なっています。

令和2年改正後の民法は次のようになっており、人損については5年、物損については3年となっています。

人損については民法改正前は物損と同じ3年でしたが、5年に延長されました。原則としてこの期間内に訴訟提起をする必要があるということになります。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)第724条

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
  2. 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

期間の起算点ですが、交通事故の場合、ひき逃げなどのケースを除けば加害者がわかっていることが多いので、物損も人損も交通事故発生日が起算点になることが多いと思われます。

ただし、人損で後遺障害が発生するような場合は、いわゆる症状固定時(治療を続けてももう症状が改善しないといえる時)を起算点として取り扱うこともあります。このような場合は改正前の民法の規定でも人損の消滅時効よりも物損の消滅時効の方が先に到来することになります。

従って、例えば症状が重篤で、症状固定まで数年かかるというような場合には、人損が確定する症状固定時の到来までに物損の時効が到来してしまうこともありえます。

この場合は物損だけ先に訴訟提起しなければならないことになります。物損の訴訟と人損の訴訟の両方で事故状況など重複する主張をしなければならず面倒ですが、物損と人損の両方がある場合について、最高裁は、人損と物損は別であるとして、基本的に物損の加害者と被害を知ったときから時効は進行するとしています(最高裁判所第三小法廷令和2年(受)第1252号 令和3年11月2日判決)。

消滅時効の管理は一般の方には難しいので、ご心配の場合は弁護士に相談して確認いただきたいと思います。