1. 試用期間とは
試用期間とは、採用した労働者の適性や能力を会社が見極める期間のことです。
必ず設けなければならない期間ではありませんが、多くの会社が採用しています。
試用期間のこのような意味からして、会社は自由に採用不採用(解雇)を決められるようにも思えますが、実際はそうではありません。
2. 試用期間中の労働契約の性質
試用期間は「解約権留保付労働契約」とされ、会社と労働者の間ですでに労働契約が締結されている状態です。
会社は解約権(本採用拒否の権利)を有していますが、この解約権は自由に行使できるわけではありません。
労働者の解雇については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要とされており(労働契約法第16条)、この要件は試用期間中の解約権行使についても妥当します。
試用期間の性質から、通常の解雇よりやや広く解雇が認められる程度だと理解しておくべきでしょう。
関連記事 解雇権濫用の法理
3. どのような理由があれば解雇できるか
① 成績不良・能力不足
会社側としては社員の能力を最も重要視すると思いますが、3か月や6か月の試用期間中に、長期勤続している社員と同等のレベルに達することはそう多くありません。
能力不足については、まずは十分に指導・教育を行うことが前提で、これが不十分なままでする解雇は無効とされる怖れが強いです。
② 勤怠不良
欠勤や遅刻が多い場合ですが、回数が少なければ解雇が認められる可能性は低いと考えられます。
もちろん、体調不良等の正当な理由がある場合は勤怠不良とはいえないでしょう。
また、欠勤や遅刻が続く場合でも、まずは注意や指導を行い、それでも改善が見られない場合に解雇が認められることになります。
③ 協調性の欠如、規律を乱す、指示に従わない
上司からの指示に反発したり、喧嘩など他の社員とトラブルになるような場合ですが、この場合もまず注意・指導を行い、それでも改善されないといった事情があるのであれば、解雇が有効となる可能性は高くなります。
④ 経歴詐称
学歴、職歴、犯罪歴(賞罰)、資格等についての経歴詐称があった場合ですが、全ての経歴詐称が解雇理由になるわけではなく、一般的にそのような経歴詐称がなければ採用はしなかったと認められる程度の重大な詐称であることが必要だと考えられます。
4. 試用期間中の解雇手続きの注意点
試用開始から14日を過ぎて解雇する場合は、30日以前に解雇予告をする必要があります。
解雇予告をしない場合は、解雇予告手当に相当する金額を支払う必要があります。
試用期間についてもすでに労働契約は成立しているので、通常の労働契約における解雇と同様の規制に服します(労働基準法第20条)。
5. 試用期間の延長
当初定めた試用期間では適性の判断が難しい場合があります。
このようなケースについては、合理的な理由があること及び試用期間を延長する場合がある旨を就業規則や労働契約書に記載してあれば、試用期間を延長することが可能です。
延長期間が妥当かどうかも延長の有効性の判断要素になります。
延長期間を定めなかったり、不相当に長期の延長期間を定めますと無効と判断される可能性が高くなります。