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訴えの取下げと取下げ擬制(民事一般)

2024-02-20

1. 訴えを取下げしたい場合

例えば、売買契約に基づいて、支払われない売買代金を請求する訴訟を提起したとします。

しかし、訴訟提起後に確認したところ、実際は売買契約は締結後何らかの理由で取り消されていたことが発覚した場合、また、訴訟外で被告と話し合いができ、訴訟を継続する必要がなくなった場合等は、訴訟を続けることは無駄なので訴訟を終了させたいと考えます。

そのような場合に取りうる手段として「訴えの取下げ」があります。

2. 訴えの取下げの方法

訴えの取下げについては民事訴訟法261条以下に規定があります。

訴えの取下げは、判決が確定するまでいつでもでき、全部の取下げのほか、一部の取下げもできます。

書面(訴えの取下げ書)ですることが求められていますが、口頭弁論期日などにおいて口頭ですることも可能です。

3. 相手方の同意が必要な場合

訴えが一度取り下げられても、取下げ後再び提訴することが可能です。

従って被告としては何度も提訴されるリスクがありますので、一度訴訟を起こされたのであればその訴訟で裁判所の判断をもらって解決したいと考えることもあるでしょう。

そのような場合がありますので、被告が準備書面を提出するなど、争うことが裁判所に明らかになった後は被告の同意が必要となります。

なお、被告が訴えの取下げ書を受け取った日から2週間以内に異議を述べなかったときは取下げに同意したことになりますので、被告としては積極的に異議を述べる必要があることになります。

(訴えの取下げ)

第261条

  1. 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
  2. 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
    ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
  3. 訴えの取下げは、書面でしなければならない。
    ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。
  4. 第2項本文の場合において、訴えの取下げが書面でされたときはその書面を、訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされたとき(相手方がその期日に出頭したときを除く。)はその期日の調書の謄本を相手方に送達しなければならない。
  5. 訴えの取下げの書面の送達を受けた日から2週間以内に相手方が異議を述べないときは、訴えの取下げに同意したものとみなす。
    訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から、相手方がその期日に出頭しなかったときは前項の謄本の送達があった日から2週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。

4. 訴え取下げの擬制

なぜか原告が期日に出頭しなかったり、書面を提出しなかったりと訴訟追行に不熱心な場合があります。

このような場合、被告としてはいつまでも訴訟が終わらないので法的に不安定な状態が長期にわたって続くことになってしまいます。

そのようなことを回避するため、原告及び被告が、口頭弁論・弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合で、1か月以内に期日指定の申し立てをしないときには、訴えの取下げがあったものとみなされます。

出頭しても何も申述しない退廷、退出した場合も同様です。

この場合、裁判は休止となり、休止期間満了で取り下げ擬制と呼ばれ、裁判は終了します。

また、当事者双方が、2回連続して、裁判期日に出頭しなかった場合訴えの取下げがあったものとみなされます。

(訴えの取下げの擬制)

第263条

当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、1月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。

当事者双方が、連続して2回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。

取下げ擬制に関する裁判例として、最三小決令和5年9月27日があります。

大阪拘置所に収容されている原告が大阪地方裁判所に提起した損害賠償請求訴訟について、原告も被告も第1回口頭弁論期日、第2回口頭弁論期日に出頭しなかったため、第2回口頭弁論期日は延期され、新たな口頭弁論期日が指定されました。

原告は本人訴訟で、第2回口頭弁論期日の後、面会した弁護士が東京地方裁判所には出頭し得ると述べたとして、本件訴訟を同裁判所に移送することを求める申立てをしました。

被告は、民訴法263条後段により本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされると主張しました。

原審は、本件口頭弁論期日において、審理を継続することが必要であるとして、期日の延期とともに新たな口頭弁論期日の指定がされたのであるから、本件口頭弁論期日は民訴法263条後段の「期日」に当たらず、同条後段の規定にかかわらず本件訴訟について訴えの取下げがあったものとはみなされないと解すべきであると判断した上、本件移送申立てに基づき、本件訴訟を東京地方裁判所に移送すべきものとしました。

最高裁は、次のような理由で原審判決を破棄しました(下線部は筆者にて加えさせていただきました)。

「民訴法263条後段は、当事者双方が、連続して2回、口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合、訴えの取下げがあったものとみなす旨規定する。

同条後段の趣旨は、上記の不出頭の事実をもって当事者の訴訟追行が不熱心であるとして、訴訟係属が維持されることにより裁判所の効率的な訴訟運営に支障が生ずることを防ぐことにあると解されるが、同法には、上記の場合において、同条後段の適用を排除し、審理を継続する根拠となる規定は見当たらない。

そうすると、上記の場合に、審理の継続が必要であるとして、期日を延期して新たな口頭弁論又は弁論準備手続の期日を指定する措置がとられたとしても、直ちに同条後段の適用が否定されるとは解し得ず、同条後段の「期日」の要件を欠くことになるともいえないというべきである。

そして、本件訴訟においては、当事者双方が第1審の第1回口頭弁論期日及び本件口頭弁論期日に出頭せず、訴状の陳述もされていないところ、相手方(原告のこと)は、拘置所に収容されている死刑確定者であり、本件口頭弁論期日に至るまで、訴訟代理人を選任する具体的な見込みを有していたともうかがわれないことからすると、相手方が主観的に訴訟追行の意思を失っていなかったにせよ、当事者双方が出頭しないことにより裁判所の訴訟運営に支障が生じており、これが直ちに解消される状況になかったことは明らかであり、そのほか訴えの取下げがあったものとみなすことを妨げる事情も見当たらない。

そうすると、本件口頭弁論期日において、上記の措置がとられたからといって、同条後段の適用が否定されると解することはできないというべきである。

したがって、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされないとした原審の判断には同条後段の解釈適用を誤った違法がある。

以上のとおり、原審の上記判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

論旨は理由があり、原決定は破棄を免れない。

そして、以上に説示したところによれば、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされ、本件移送申立ては不適法であるから、原々決定を取り消し、相手方の本件移送申立てを却下すべきである。」

延期され実際に開かれなかった期日についても民訴法263条の「期日」とされ、この期日を含めて2回不出頭が続いたとして同条を適用し、取下げ擬制を認めた判例となります。