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SNSに不適切な投稿をした社員を解雇できるか(労働)

2024-05-01

1. SNS投稿について

SNS投稿は誰にとっても非常に身近なものになっており、人によっては複数のSNSを利用し、投稿に多くの時間や手間を割いている、というケースも多くなっています。

反面、SNSの利用に関連するトラブルも頻繁に発生しており、勤務中の不適切行為の投稿が拡散される等ニュースとして報道されるケースも多くなっています。

2. 勤務事時間中にSNSをしている場合

従業員は、勤務時間中は業務に専念し、私的な活動を控えなければならないという職務専念義務を負っています。

厚労省が出しているモデル就業規則(令和5年7月版)にも遵守事項として「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」が挙げられていますが、職務専念義務を明らかにしたものと言えます。

現実にも従業員がSNSに時間を割いていては、業務が滞ることもあるでしょうし、他の社員の士気にも影響して職場の秩序が乱されることになります。

そのため最近ではより具体的な義務としてSNSも含めて勤務時間中のパソコンの私的利用の禁止を就業規則に設ける会社もあります。

勤務時間中にSNSをすることは、職務専念義務や就業規則に違反することになりますので、懲戒の対象となりえます。

ただ、懲戒には段階があり、記載内容が会社の秘密を漏洩したり会社や取引先の名誉を著しく棄損したかどうか等により、どのような懲戒処分を科すかを決めなければなりません。

戒告や減給といったより軽い処分、内容によっては厳重注意や反省文を作成させるといったことで再発を防止するという方が適当な場合もあるでしょう。

なお、懲戒解雇ができないとしても、その社員の就業規則違反の行為により継続して雇用することができないような場合には会社都合による普通解雇ができる場合があります(普通解雇の要件については記事「解雇権乱用の法理(労働)」をご参照ください。)。

3. 勤務時間外のSNSの投稿について

勤務時間外におけるSNSへの投稿は、私的な行為として制限ができないのが原則です。

しかし、投稿内容によっては問題になりえます。

例えば、仕事の内容や取引先が特定できるような投稿をすることなどです。

従業員は在職中、使用者との労働契約に付随して、使用者の営業上の秘密を第三者に漏洩することや目的外使用をしてはならないという「秘密保持義務」を負っています(労働契約法3条4項)。

上記厚労省のモデル就業規則では「在職中及び退職後においても、業務上知りえた会社、取引先等の機密を漏洩しないこと」という遵守事項が定められています。

また、職場の同僚や取引先等の関係者が特定できるような形で悪口を書いたり、会社の批判をするような場合も、それがSNSに投稿されて多くの人の目に留まり会社や関係者の社会的信用を下げることになれば会社としては放置できません。

SNSの内容が会社や、関係者の社会的評価を貶めるようなものであれば、名誉棄損として民事上の損害賠償責任や、名誉棄損罪に該当し刑事上の責任(刑法第230条1項 3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金)を負わなければならない場合があります。

刑事責任については、内容によっては侮辱罪(刑法231条 拘留又は過料)や信用棄損罪・偽計業務妨害罪(刑法第233条前段後段 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)等が成立する場合があります。

このような理由から、会社は通常会社の名誉や信用を損なう行為を就業規則で禁止しています。

上記厚労省のモデル就業規則でも「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」という遵守事項が定められています。

したがって、勤務時間外でのSNSへの投稿であっても就業規則に違反するとして懲戒の対象になりえ、普通解雇が認められる場合もあります。